……色々混じっている表題だが、気にしない。
江戸時代、庶民の一家族が最低限一年間暮らすのに必要な年収は、
約十両とされていた。
長屋住まいの若い大工や同心等の下級武士で三十両弱、中流の農家で五十両弱の時代である。
何を以ってして「最低限」と定義付けるかは、長くなるので割愛するが(手抜き)、
死なぬ程度に家族を養える、その程度の額なのであろう。
ちなみに、主持ちの武士は
知行(領地=収穫が収入となる。石高。)と
扶持米(米の現物支給)、
給金の三つが収入であり、現在でも生きている陰口の
「(ど)
サンピン(侍)
」という言葉は、
最も身分の低い侍の給金が三(サン)両一(ピン)分であった事から由来している。
士農工商という身分制度ではあるが、実は一番貧乏だったのは武士である。
無論、稼いでいる者は稼いでるというのは今も昔も変わらぬが、
稼いでいない層は今とは比べ物にならぬ程の広がりを持っていたようである。
経済活動に殆ど寄与しない侍にとって、主持ちであるか否か。
その主は城勤めか否か、高い役職に就いているか否か。
そのまんま、年収の差に反映されるのである。
「武士は喰わねど高楊枝」
冷や飯と一汁一菜を日に一・二度、箱膳に乗せられれば上出来の貧乏侍にとって、
腹を満たすは二本差し(士分)の自尊心だけであったのであろう。
金は天下の回り物。
稼いでいるのは矢張り、江戸の時代も商人が筆頭である。
それだけに狙われる事も多く、押し込み強盗や火付けも頻発していた。
金を守るのは金で、と考えるのは
金持ちの理屈。
野盗の群れを撃退する為に用心棒や郎党を雇ってみたり、
町の顔役や奉行・同心への
山吹色の切り餅の付け届けも忘れずに。
となれば、金で守られていない金の在る所を狙うのは
盗人の理屈。
意外にも盲点は、
大名屋敷にあった。
御上の命で主は留守がちであり、家を守る筈の下士達の数も、
謀反の作為を疑われぬ用心から少な目に揃えるのが常であったからだ。
そこに着目したのがこの男。
次郎吉……いや、ここでは敢て「二郎吉」と呼んでおこう。
『鼠小僧』と世間に言わしめた彼が盗みに盗んだその数99件、被害総額は三千両にも及ぶと云う。
人は一切殺めず、盗んだ金銭は残らず貧しい町民達にばら撒いて、
後世の語り部に
「義賊」と謳われ名高い彼だが、史実はさに非ず。
元鳶職の博打三昧な男が、
博打と女郎遊びの金を凌いだだけだったと。
……こんな年端も行かぬ少年が、そんな事する筈は無いと、
お兄さんは信じますよ?(真顔で頷き)
こそ泥に屋敷を荒らされ、被害者の大名達が黙っている筈はないのではないか?
否、彼らは黙っていた。
何より恥を重んじる、侍代表
とらでぃしょなるじゃぱねすく。
自分の屋敷に盗人が入った等と表で訴えれば、上役からは「武士に有るまじき不届き者」と逆に咎められ、
街では町人達の格好の笑いの種になり、恥辱を晒すのは自分なのであるから。
主の「他言無用」の命の下、重く閉ざした門の中でその事実は隠蔽され続けたのである。
だが、中には与力や同心といった
江戸の警察機構の下部組織に顔が利く者も居ただろう。
冒頭にも申した十両という額は、窃盗の刑罰の境目でもある。
十両未満の窃盗であれば、
重敲(おもたたき=百叩き)と罪人の
入墨を身に受けるだけ。
ところが、十両を超えると町人であれば即刻
磔(死罪)と相成る。
本来は奉行所が乗り出すような重罪人だが、ここは隠密に内々にと言い含め。
同心の手駒である
岡っ引き(目明し)を街中に走らせて。
……彼が持つ十手に紫房が見えるが。
ドラマや映画と同様、この
絵巻の為にと親しき与力が貸してくれた物に相違無い。
「国許の臥した母に見せる為」とか言っちゃって。(言い掛かり)
彼が投げる銭は、容疑者を捕まえる為の投擲術であったのだろうが。
同心から紙一枚の手札(認可状)を受けただけの私設の捕り方に、生活の余裕が在る筈もなく。
貰う給金は、年一分(貧乏侍の所得のなんと1/12!!)程度の身分である。
投げるのが一文銭だったとしても、4枚も投げれば団子やおでん位ならば一串買えるのである。
きっと後で必死に銭を探す、哀愁を帯びた後姿が見られた事であろう。
石でも投げておれば良いものを…(余計な御世話)
巷の噂では、彼らが実の
兄と
弟だったという説も有る。
それが事実ならば、私はその間に立って仲裁の振りして懐を膨らませていただろう。
……ただし、文献や江戸人別帖には
一切その下りは記されていない。(だったら言うな)
男だった~ら~ 一つにかける~
か~けても~つれた 謎を解く~
誰が呼んだか 誰が呼んだか
銭無し俊さん~(哀)
花のお~江戸は 八百八町~
今日も決~めての 今日もわ~ずかな
銭が~飛~ぶ~♪
……手前ぇら、俺の銭拾うんじゃねぇぞっ!!(兄の叫び、いと哀し)
オリジナル
※注意※
此処に掲載したSDピンナップは、
株式会社トミーウォーカーのPBW『TW2:シルバーレイン』用のイラストとして、
藤堂巽・結更夜・凪龍一朗・黒執躑躅・芹澤望・藤原洸太・芹澤天・榑林燈子・雨乃森珪・中村淳子・
芹田礼次郎・芹田俊一郎が作成を依頼したものです。
イラストの使用権は発注者に、著作権は犯ばあぐ絵師に、
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尚、このブログにイラストを掲載する事は、
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最大画像にすると、本当に絵巻みたいなスクロール状態に~♪
………色々いぢり過ぎ?(笑)
此の企画に関しては
コチラを一読して頂く事を推奨致します。